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「手外科」とは、主に上肢の外傷(骨折や関節脱臼、腱・神経・血管損傷など)や運動器疾患に対する機能再建外科のことです。「手外科」は単に手術治療だけでなく、作業療法士やハンドセラピストと協力して動く手、使える手を取り戻すための専門的なリハビリテーションを包括しています。 手は小さな容積の中に腱・神経・血管など実に多くの組織が詰まっています。これらの組織一つ一つが重要な役割を担っているという解剖学的な特殊性を有しています。手外科では、それぞれの組織を解剖学的に再建することに加えて、これらの運動の調和を考えながら手術・リハビリテーションを行う必要があり、緻密な計画性や繊細な手術手技が要求されます。 当院の上肢・手外科グループは、肩関節から手指までの上肢外傷・運動器疾患全般に関する診断・治療のエキスパートである日本手外科学会認定手外科専門医から構成されています。我々が扱っている主な疾患と治療を紹介します。
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■ 手指骨・手根骨の骨折や橈骨遠位端骨折などの上肢骨折に対する骨接合術 |
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橈骨遠位端骨折は、ころんで手をついた際に起こる骨折で、頻度の高い疾患です。特に骨粗鬆症を伴っている高齢女性に好発します。手のつき方、骨折線の入り方によって、様々な骨折のタイプがあります。当科では骨折のタイプに応じて最も適切な治療法(ギプス固定、ピンニング、プレート固定など)を行っております。 また指や手(手根骨)の骨折に対しても、各種インプラント(スクリューやプレートなど)を使用して術後拘縮(指の動きが固くなる)をできるだけ作らないような治療を心掛けております。 特に手指骨折や橈骨頭骨折、尺骨頭骨折に対しては、生体内吸収性のプレートを各症例に応じて適切なサイズ・形態に採型し使用しております。これは将来的に骨に置換されていく材質であり、手術後の抜去が不要で現在注目を浴びているものです。当院では全国に先駆けて臨床使用および開発、基礎的研究を行なっております(生体内吸収プレート作成手順)。
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■ 手根管症候群や肘部管症候群、前・後骨間神経麻痺などの末梢神経障害に対する手術 |
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末梢神経は中枢神経と末梢組織との間にあって両者を結ぶ重要な役割を担っています。末梢神経障害をきたす要因には、遺伝、中毒、代謝異常、炎症・アレルギー、外傷・圧迫などがあり、これらにより生じる症状はしびれや痛みなど多様で、それぞれに特徴がみられます。
上肢では、特に肘や手首で神経が圧迫される肘部管症候群(尺骨神経)、手根管症候群(正中神経)が主な疾患として挙げられます。当科ではこれらの疾患に対して、神経の圧迫を解除する手術を行っております。また、手根管症候群については発症機序についてはまだ不明な点が多く、当科では以前より本疾患の発症原因を明らかにするための基礎および臨床研究を行っており、論文や学会で報告を行っております。
前・後骨間神経麻痺は特に誘因なく指や手首が麻痺する比較的めずらしい疾患ですが、当科では電気生理学的検査で異常部位を明らかにした上で、必要に応じて神経剥離術を行っております。
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■ リウマチに伴う上肢疾患に対する関節形成術および人工関節置換術 |
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関節リウマチとは、関節が炎症を起こし、軟骨や骨が破壊されて関節の機能が損なわれる自己免疫疾患です。特に手関節障害を合併する頻度は高く、発症2年で約70%、10年で約90%と全身の関節のなかでも特に罹患しやすい関節です。当科では、肘関節、手関節、指の関節において関節リウマチに伴う痛みや変形に対して、除痛および機能回復を目的とした関節形成術や人工関節置換術を行っております。 ※現在、手関節の人工関節は国内の限られた病院でしか承認されていませんが、当院は承認施設となっております。 |
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■ 屈筋腱断裂、伸筋腱断裂に対する腱縫合術、腱移行術 |
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刃物などで手を切った際に、指を伸ばす腱(伸筋腱)や曲げる腱(屈筋腱)が切れると指の曲げ伸ばしができなくなります。そのような場合には、腱を縫合する必要がありますが、腱は周囲の組織と癒着しやすく、また適切な縫合を行わないと再断裂を来します。当科では経験豊富な手の専門医が各症例に最も適した治療法を提供しております。 |
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■ 手指の変形性手関節症、母指CM関節症に対する関節固定術、関節形成術 |
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ヘバーデン結節は指の第1関節(DIP関節)が変形し、曲がってしまう原因不明の疾患です。第1関節の背側の中央の伸筋腱付着部を挟んでコブ(結節)ができるのが特徴です。この疾患の報告者へバーデンの名にちなんでヘバーデン結節と呼ばれています。また、第2関節(PIP関節)に同様の症状を起こす疾患をブシャール結節と呼びます。日常生活に支障を来す痛みを伴う場合は、必要に応じて関節固定術などの手術を行います。
一方、親指は手の機能に非常に重要な役割を果たしています。親指の動きに特に重要な働きをしているのが「付け根」の関節、すなわち手関節に近い部分にある手根中手関節であり、略称として一般的にCM関節と呼ばれます。このCM関節の変形が進むと、物をつまむ時やビンのふたを開ける時など親指に力を必要とする動作で、手首の母指の付け根付近に痛みが出ます。また、進行するとこの付近が膨らんできて母指が開きにくくなります。痛みが強い症例に対しては、関節を固定することにより除痛を図る関節固定術を行っております。
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■ SNAC/SLAC wristに対するfour corner fusion |
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Scaphoid Nonunion Advanced Collapse (SNAC) やScaphoLunate Advanced Collapse (SLAC)は外傷後にともなう変形性手関節症として知られており、その程度が重症化するにしたがい、疼痛の増悪や可動域制限などの機能障害の程度が進行していきます。本疾患に対する治療方法は多くの報告がありますが、当院では生体内吸収性プレートを用いたfour corner fusionを2009年より行っており、良好な治療成績をおさめ国内外の学会で報告しております。 |
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■ キーンベック病などの手根骨壊死に対する関節形成術や血管柄付き骨移植術 |
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月状骨がつぶれて扁平化する病気をキーンベック病といいます。月状骨は手首(手関節)に8つある手根骨の1つでほぼ中央に位置します。月状骨は、周囲がほぼ軟骨に囲まれており血行が乏しいため、血流障害になり壊死しやすい骨の1つです。症状は、手を使った後の手首に痛みや腫脹です。当院では、進行した症例に対しては壊れた月状骨を摘出して適切な形にトリミングした後に腱(長掌筋腱:移植腱としてよく使用される)を巻きつけて、元の部位に戻す腱球置換術を行っております。 |
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■ 労働災害などにより切断・挫滅された手指の再建手術 |
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当院は開学当初より、勤務者医療や予防医学の推進を掲げて治療を行っておりますので、労災外傷は積極的に受け入れる方針です。なかでも、切断指に対するマイクロサージャリー(顕微鏡下手術)の技術を用いた再接着術や、挫滅された手指先端部に対して整容的観点など患者のニーズに応じて、皮弁形成術などによる再建手術を行っております。また、重度四肢外傷症例における四肢の軟部組織欠損に対する遊離・有茎皮弁形成術に対しても、外傷再建外科医として初療より参画し、早期軟部組織被覆を目指し、標準化された治療を提供できるよう日々切磋琢磨しております。さらに、損傷や挫滅程度が高度で已む無く断端形成術を行った症例についても、ADL制限などの機能障害程度によっては、指用イリザロフ型創外固定を用いた指骨延長術や生じた手指関節拘縮に対する拘縮解離術なども行なっております。
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■ 肩腱板断裂、腱板断裂性肩関節症に対する関節鏡視下腱板修復術、リバース型人工肩関節置換術 |
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肩腱板とは、肩甲骨と上腕骨を連結する4つの腱から構成される板状の構造体です。肩関節をスムーズに動かすために重要な機能を果たしています。肩腱板断裂とは、腱板が上腕骨の付着部から切れることで、肩関節痛や肩挙上制限などの症状がおこります。転倒して手をついたり、肩を直接打撲するようなケガによる外傷性断裂と、加齢によって徐々に起こる変性断裂があります。投薬、注射、リハビリなどによる保存的治療法で症状の改善が得られない場合は、手術加療を行います。当院では最新の関節鏡(内視鏡)を用いて、糸付きのアンカーを使用した腱板修復術を行っております。 また、腱板断裂を放置すると、上腕骨頭の上方化がおこり、関節の変性が進行する病態を腱板断裂性肩関節症といいます。肩の挙上が困難な患者さんには、リバース型人工肩関節置換術を行っております。この手術により、肩関節の痛みが軽減し、挙上可能となることが期待できます。 |
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■ その他 |
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開放骨折や化膿性骨髄炎、骨軟部感染症に対する局所高濃度抗菌薬持続注入療法:iMAP(intra-medullary antibiotics perfusion) & iSAP(intra-soft tissue antibiotics perfusion) 、その他、ばね指などの腱鞘炎、デュピュイトラン拘縮、先天性疾患、骨・軟部腫瘍など、また近年では、CRPSや手指関節拘縮、多発する屈筋腱腱鞘炎などの疾患に対して、炭酸ガス経皮吸収療法を行い、徐々に症例数を重ねております。年間約500例以上の幅広い外傷・疾患に対して上肢・手外科手術を行っています。
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◎スタッフ |
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